ここで事業承継税制の概略をお話ししましょう。
この制度は一定の条件を満たして、中小企業の株式を後継者が取得すれば、相続税等の納税を猶予するというものです。具体的に言えば、事業承継を前提として、自社株(非上場株)を後継者に贈与した場合、雇用承継してから承継前の雇用の8割を5年間維持するという条件を満たせば、株の3分の2まで贈与税が全く課せられません。加えて、先代が死亡してから株を引き継いだ場合も、相続税の8割が免除されます。
さらに、この事業承継税制を活用することで株の3分の2まで無税で後継者に引き継がせることができ、もう一つ、2018年4月から10年間の特例措置ではありますが、株式の100%が免除されることになったのです。
事業承継税制の一般と特例の相違点
項目 |
一般 |
特例 |
対象株式 |
発行済議決権株式総数の3分の2 |
全株式 |
相続時の猶予対象評価額 |
80% |
100% |
雇用確保要件 |
5年平均80%維持 |
実質なし |
贈与税の実施者 |
(改善前)先代経営者のみ (改善後)複数株主 |
複数株主 |
後継者 |
後継経営者一人のみ |
後継経営者3名まで (10%以上の持株要件) |
相続時精算課税 |
推定相続人等後継者のみ |
推定相続人等以外も適用可 |
特例経営承継期間後の減免要件の追加 |
民事再生・会社更生時にその時点の評価額で相続税を再計算し、超過部分の猶予税額を免除 |
譲渡・合併による消滅・解散時を加える。 |
特例承継計画の提出 |
不要 |
要 |
提出期間 |
n/a |
2018年4月1日から5年間 |
先代経営者からの贈与の期間 |
なし |
2018年1月1日から 2027年12月31日 |
この制度が事業の円滑な引継ぎだけに使われているかと言えば、それは疑ってかかるべきでしょう。事業承継税制を上手に活用することで、会社の運営権だけではなく、資産家の全財産を次世代に引き継ぐことができるからです。つまり、自分の財産を会社の財産として置けば、会社の経営権だけでなく、ほぼ全財産を無税で次世代に引き継ぐことができるのです。