受益者等課税信託の課税関係

信託のうち、集団投資信託、退職年金等信託、特定公益信託、法人課税信託のいずれにも該当しないものを「受益者等課税信託」といい、この受益者はこの信託の財産に属する資産や負債を持ち、この財産を原因とする収益及び費用は受益者のものとみなして、法人税法の規定が用いられ、パス・スルー課税が適用されます。

なお、信託の計算期間に関わらず、受益者である法人の各事業年度の期間に対応する収益や費用となります。また、法人が特定受益者に該当し、信託にかかる債務を弁済する責任の限度が実質的に信託財産の価額とされているとき、この法人の信託損失額のうち調整信託金額を超える部分の金額(信託損失超過額)は、所得金額の計算上損金の額に算入できません。ここで損金の額に算入できなかった金額は翌年以降に繰り越され、利益の額を限度として損金の額に算入されます。
個人が特定受益者である場合、その個人が信託から生じる不動産所得を持つ場合、損失があっても不動産所得にかかる総収入額から必要経費を控除した金額を不動産所得の金額として取扱い、損益通算はできないとされています。

さてここでは具体例として退職給付信託を見てみます。

退職給付信託とは、事業主の保有する有価証券等の財産を退職給付に充てる目的で信託銀行に信託財産として拠出することにより設定する信託です。委託者を企業、受託者を信託銀行、受益者を年金又は退職一時金の受給権者とする信託契約になります。
信託財産を退職給付会計基準のもとで年金資産とするには、会社からこの資産が時価で拠出されたと同様の会計処理を行うことになります。そして有価証券の含み損益は拠出時点で実現されることになります。
また、退職給付信託を行った場合、会計処理変更時差異のうち、信託財産の時価と銅市の金額は、退職給付会計基準適用初年度の機首に一時費用処理し、信託財産の時価を超える差異は15年以内に償却することになります。
退職給付信託については、会計の実務指針の処理と税務上の処理方法との間に以下の差異が生じるので注意が必要です。
(1) 退職給付信託に拠出した資産は税務上、信託者である事業主が自ら保有しているものとみなし、退職給付信託設定損益は、会計上の費用や収益の認識時に税務上の損金や益金の額に算入することはできません。
(2) 事業主又は退職給付信託から退職一時金規定に従って退職者に給付が行われたとき、その支給額は会計上の費用にはなりませんが、税務上、退職給与引当金が減額され、益金の額に算入されるとともに支給額は損金の額として処理されます。また、退職給付信託における年金資産が外部に売却された場合の売却損益や債券の償還を迎えることにより発生した償還損益については、税務上、売却時または償還時の損金又は益金となりますが、会計上損益は発生しません。
(3) 退職給付信託の年金資産から稼得された配当金や利息収入等の実際運用収益については、税務上、事業主の益金の額に算入されますが、会計上は利益とはなりません。
(4) 退職給付信託の年金資産にかかる期待運用収益及びその年金資産にかかる数理計算上の差異についての費用は、税務上の損金又は益金の額にはなりません。
(5) 計算書類の退職給付制度にかかる注記として、期末における退職給付引当金残高とそれを相殺表示されている退職給付信託における年金資産額を記載し、貸借対照表上の退職給付引当金との関係を明らかにする必要があります。