投資事業有限責任組合においてパス・スルー課税が否定された事例

パス・スルー課税が適用される投資事業有限責任組合の持つ株式について、この組合員がその評価損をパス・スルーして組合員の段階で損金の額に算入できるかどうかについて、争われた事件の判例です。

1.事案の概要

投資事業有限責任組合の組合員である納税者は、組合の所有する株式の価額が著しく低下したとして有価証券の評価損を計上し、損金の額に算入して法人税の確定申告をしました。国税庁は、投資事業有限責任組合の組合事業にかかる損益の額を、純額方式で計算している場合には、評価損の損金算入は認められないとしました。

2.争点

パス・スルー課税が適用される投資事業有限責任組合の持つ株式について、この組合員がその評価損をパス・スルーして組合員の段階で損金の額に算入できるかどうか。

3.裁判所の判断

投資事業有限責任組合契約は任意組合と同様で、法人格がなく、それ自体納税義務の主体にはなりません。

法人が組合員となっている場合の組合事業に関する貴族損益額の計算の方法については、法人税基本通達14-1-2で総額方式、中間方式、純額方式の3つの方法が定められており、組合が純額方式によって組合事業にかかる帰属損益の計算をしている場合には、組合事業に受取配当金が存在していたとしても、例えば受取配当の益金不算入、所得税額の控除、引当の繰り入れ等の規定は適用できません。純額方式で帰属損益の額を計算している場合には、総額方式とは異なり、組合員が組合事業における配当収入や引当金にかかる対象資産等を帳簿で個別に認識せずに、その損益計算の結果だけを組合事業から受ける損益と認識しているからです。

また、法人税法第3条は、資産の評価損について、各事業年度の所得の金額の計算上、損金の額に算入しない旨規定し、金銭債権を除く資産につき、災害による著しい損傷その他の政令で定める事実が生じたことで資産の価額がその帳簿価額を下回ることとなった場合、法人が資産の評価替えをして損金経理でその価額を減額したときは、その減額した部分の金額の売り、その評価替えの直前の資産の帳簿価額とその評価替えをした日の属する事業年度の終了時の資産の価額との差額に達するまでの金額は、損金の額に算入する旨規定しています。同条2項が資産の評価損の対象資産について、損金経理による帳簿価額の減額を損金算入の要件としているので、対象資産を個別で計上しない純額方式では、その適用は認められないと解するのが妥当です。

以上より、本件では、純額方式により組合事業にかかる帰属損益の計算をしており、評価損の対象資産である本件株式について、その出資額に応じた金額を帳簿等において資産として個別に計上しておらず、評価損の経理処理に当たっても、出資割合に相当する金額を組合勘定から減額しているだけで、本件評価損を損金の額に算入することはできない、としました。
(平成22年2月17日裁決)

どうやら、手間はかかりますが、総額方式でしっかりと管理をしておいた方が、後々良いようですね。