匿名組合契約に基づくオランダ法人の利益分配権に課税権が及ばないとされた事案

匿名組合分配金は日蘭租税条約に当たる所得かについて争われた事件の判例です。

1.事案の概要

アメリカ法人A社が100%出資のアメリカ法人B社が日本法人C社を設立。B社がオランダ法人D社を設立後、日本法人C社の株式全てをオランダ法人D社に譲渡。オランダ法人D社と日本法人C社が匿名組合契約を締結。C社株式を現物出資する方法でオランダ法人E社を設立。さらにオランダ法人D社が匿名組合の出資持分を現物出資によってオランダ法人X社(原告)を設立。さらにX社がオランダ法人から匿名組合員の地位を承継。原告X社が日本法人から得られた所得は、日本国内における恒久的施設を通じて行う事業から生じた所得であって、国内源泉所得(法人税法138条1号)や日蘭租税条約の企業の利得(8条1項)に当たるとした。

2.争点

本件契約は匿名組合契約(当時商法535条)か民法上の組合契約(民法667条第1項)か。
原告が本件契約に基づいて匿名組合分配金として受領したものは日蘭租税条約に期待するいずれの所得に当たるか。

3.判決要旨

(a) 契約書に「当該配分により出資金勘定がマイナス残高となることもある」と記載されていることで、原告が無限責任を負う意味と解することはできず、匿名組合員が損失を分担することは自由に定められるため、この定めがあることをして、本件組合が匿名組合ではないということはできません。

(b) 匿名組合員が業務監視権を有する旨、契約書に規定されていることをして、業務執行組合員でない原告が営業監視権に対して付与されているわけではなく、しかもこの規定が匿名組合の性質に反するものではありません。

(c) 契約書に新たな匿名組合い及び営業者の参加が予定され、これについて総組合員の合意が必要とされていることをして、匿名組合と相いれないというわけではない。出資者の数が増え、出資者の利益の分配に重大な影響を与えるため、営業者が出資者の数を増やす目的で匿名組合契約と締結するにあたり、既存の匿名組合員の同意を必要と定めることも十分あり得るものと考えられます。

(d) 匿名組合契約に基づき、内国法人である営業者から外国法人である匿名組合員に支払われる分配金については、匿名組合では匿名組合員が恒久的施設を通じて事業を行っているわけではないので、日蘭租税条約8条1項に該当せず、日蘭租税条約第23条に規定する「一方の国の居住者の所得で善処上に明文の規定のないもの」となるため、匿名組合分配金という名目で受領した金員は、日蘭租税条約23条に規定する所得に該当するため、我が国には課税権がない。

(以下、東京高裁)
(e) 納税者が本件契約締結前において、日本の法人税の課税対象にならないように検討を重ねたことが認められるから、租税回避の目的があったと認められます。一般論として、租税回避目的が認定されれば、違法認定されることがあり得ますが、税負担を回避する目的で、匿名組合を組成する方法が許されないわけではありません。課税庁が主張する二重非課税の排除という目的は、租税条約の明文で明らかにすることで解決すべき問題です。
(東京高裁平成19年6月28日判決)

結果、最高裁第一小法廷平成20年6月5日に課税庁が行った上告受理申し立てを受理しない決定を行いました。

これが国内事案であれば租税回避目的で課税庁が勝訴したと推測できます。海外を絡めると課税庁でも手を出しづらいことがあるという事例ですね。