ケイマン・パートナーシップの本邦税法上の性格が争われた事案①

ケイマンのパートナーシップが日本の組合であるかどうかが争われた事件の判例です。

1.事案の概要

日本の個人が民法上の任意組合に出資し、船舶の共同持分権を出資日に組合員が各々購入して組合に出資することで、この組合は船舶の所有者となりました。そして組合は本船をパナマ船籍の船舶として登録し、A社をジェネラル・パートナー、本組合をリミテッド・パートナーとする、リミテッド・パートナーシップ契約を締結し、ケイマン諸島に設立。組合は本リミテッド・パートナーシップに現物出資します。このケイマンのパートナーシップはC社(傭船者)に本船の裸傭船契約を締結。本リミテッド・パートナーシップは傭船者から傭船料を受領し、組合に分配、本組合はこれを各組合員に分配します。そして本船は裸傭船契約が終了する場合、処分され、債務費用を控除して残金を組合員に分配して本組合は清算されます。

原告Xは本船舶賃貸事業の収益を不動産所得に当たることを前提として、減価償却費等を損益通算して所得税の確定申告を行いました。そこで課税庁は、この組合契約は利益配当契約にすぎず、同収益は雑所得であって損益通算は認められないとして更正処分を行いました。

2.争点

ケイマン・パートナーシップ契約は日本における民法上の組合契約であるか。

3.判決要旨

課税庁が、本件のキャッシュ・フロー・ベースの利回りを0.33%と計算し(裸傭船契約終了後は見込んでいない)、これは課税額減少効果を狙ったものであるとの主張に対して、まず海運業界における国際競争力を維持するため、外国に船籍を置く便宜置籍船をリースして使用することは主流となっています、最終的な収益率は船舶の売却価格によっても大きく変動します。

減価償却費を経費で計上し、その税額減少を見込むことが許されないならば、世界における船舶の主要な供給源であるリース業を展開することは困難になります。

合理的経済人が減価償却費と損益通算による所得減少を考慮して事業計画を策定することはごく自然なことです。そのため本件賃貸事業が経済的合理性を欠くという課税庁の主張は採用できません。

また課税庁は原告ら一般組合員は実質的に出資以外の船舶の共同所有者のリスクを負っていないと主張していますが、有限責任の効果はケイマンの法律に基づくものであり、出資額を超えて損失を負担しない合意も組合契約において認められています。これが民法上の組合契約の本質に反するとは言えません。

(名古屋地方裁判所(行ウ)平成16年第59号~第61号)

ケイマンにおける特例リミテッド・パートナーシップが、法人格を有せず、構成員間の契約関係という性質を有するものと認められますが、共同で事業を行う人との間に存在する関係とは、①2人以上の当事者の間の、②各当事者が共同事業を営むことの合意を意味するものと解されるところ、内部的に出資額以上の損失を負担しない当時者がいても、組合契約の成立を妨げるものではありません。

また、本件各船舶については、本件各リミテッド・パートナーシップ名義で船舶登録がなされており、登録名義を根拠として本件各リミテッド・パートナーシップのゼネラル・パートナーがその所有者であるということは到底できず、ケイマン法上法人格を有しない本件各リミテッド・パートナーシップ名義で登録されていることから、組合員が共同持分権を有しているということができます。

(平成19年3月8日名古屋高等裁判所判決)