りんご生産組合事件の概要

組合から組合員Aに支払われた出役対価が利益の分配であるのか、所得税法上の給与所得であるかどうかについて争われた事件の判例です。

1.事案の概要

リンゴ園を運営する民法上の任意組合がありました。設立当初から組合員が所有地面積に応じて組合経費を拠出して、所有地面積に応じて組合員や家族が作業に出益する責任出役義務がとられており、出役に対して対価が支払われることはなく、出役の過不足は現金で採算することで調整していました。

しかし一定の熟練を要する生産作業に不都合が生じ、専従者を雇い入れる方が合理的とされ、組合は管理者、専従者、一般作業員が行う形態へと変わりました。
この中で組合員Aは、一般労働者と同様に労務に従事し、組合から労賃の支払いを受けていました。そして管理者、専従者への労賃も一般作業員のものと合わせ、一括して労務費として処理していました。また、日給の金額は、作業内容や作業量、経験年数を勘案して、決定されていました。

2.争点

組合から組合員Aに支払われた出役対価が利益の分配であるのか、所得税法上の給与所得であるかどうか。

3.最高裁の判決要旨

民法上の組合の組合員が組合の事業に従事したことについて、組合から金員の支払いを受けた場合、これが利益の分配に当たるのか、給与支払いに当たるのかは、これら支払いの原因となった法律関係についての組合及び組合員の意思ないし認識、当該労務の提供や支払いの具体的態様等を考察して客観的、実質的に判断すべきものであって、組合員に対する金員の支払いであるからと言って、この支払が当然組合の利益の分配に該当するというものではありません。

組合から専従者に支払われた労務費は雇用関係にあることが明らかな一般作業員に対する労務費と同じく、作業時間を基礎として日給制でその金額が決定されており、日給の額の差も作業量や熟練度の違い等を考慮したものであり、しかも毎月所定の給料日に現金を手渡す方法がとられています。

このことから、組合やその組合員は、専従者に対する上記労務費の支払いを雇用関係に基づくものと認識していたことが伺われ、専従者に対する労務費は組合の利益の有無とは関係なく決定され、支払われていたと考えるのが相当です。

さらに組合員Aは一般作業員と同じ立場で組合の管理者の指揮命令の元で労務を提供していたと考えられます。

そのため、労務出資をした利益の分配とも考えることも困難であり、給与所得に該当すると考えなければならない、と結論付けました。
(上告審 最高裁判所第二小法廷平成13年7月13日判決)