事業承継と税金

1.ポイント
生前に出資持分を無償で移転した場合には贈与税がかかります。また、売買による場合は譲渡所得税がかかります。

2.解説
(1) 生前に出資持分を無償で移転する場合
生前に出資持分を無償で移転するには、移転時における出資持分の評価を相続税評価額により、行う必要があります。
医療法人は配当が行えないため、法人内部に利益が蓄積し、設立当初に出資した金額よりもかなり高い評価になることが多いでしょう。従いまして、一度に出資持分を贈与することになると、かなりの税金が発生すると思われますから、移転する時は事前に評価を下げるための対策を取らなければなりません。また、売買で子に譲渡した場合、売買価額は時価(相続税評価額)でなければ課税上問題が生じます。

(2) 相続により移転する場合
相続により移転する場合は、出資持分の評価は相続税評価額により評価することになります。
相続税評価額は相続税法における「取引相場のない株式」に準じて評価しますが、評価方法には「原則的評価方法」と「特例的評価方法」があります。
「原則的評価方法」は「類似業種比準価額方式」・「純資産価額方式」・両者を組み合わせる「折衷方式」の3つがあり、会社規模に応じて評価することになります。また医療法人では配当ができないため、配当を基準にして評価額を算定する「特例的評価方法」は適用できません。

(3) 生前贈与をする
贈与税の基礎控除は年間110万円と定められており、毎年110万円までなら課税されずに資産を贈与していくことが可能です。それによって相続財産は毎年確実に減少し、いずれ課される相続税も減らすことができます。ただし相続発生から3年間遡り、その間に贈与された資産は相続財産に加算されることになっています。その際、贈与にあたって納付していた税金がある場合は、贈与税額控除という形で相続税額から差し引かれます。

(4) 相続時精算課税制度を適用した生前贈与
20歳以上の子等が60歳以上の親から贈与を受け、所定の届出書を出せば、贈与税の課税価格から最大2,500万円を控除できる相続時精算課税という制度が利用できます。

この制度は通常の生前贈与とは違い、贈与した者が死亡した場合、死亡した日から3年を超える分についても、過去に贈与した財産を相続財産に加算し、すでに納付した贈与税額を相続税額から差し引くことになるので、精算制度といいます。納付済みの贈与税額が相続税額よりも多い場合には、還付を受けることができます。

この制度を利用するメリットは、相続財産に加算する贈与財産を、相続時の評価額ではなく贈与を受けた時の評価額で計算するため、相続時に贈与時よりも評価額が上昇していた場合、節税効果が得られる点です。ただし、評価額が下落していた場合には逆効果となりますので、どの財産をこの制度を利用して生前贈与するかが、重要なポイントとなります。絶対的にメリットになる制度ではないため、注意が必要です。