個人所有不動産の購入

1.ポイント
個人で所有する土地を自ら理事長を務める医療法人に譲渡したときに、まず利益相反取引に当たるため、手続きが必要なことと、時価での取引が必要になります。自分と自分が理事長を務める医療法人は赤の他人と同じように取引しなければなりません。

2.解説
(1) 利益相反取引の対処
利益相反取引を行う場合は、正しい手続と適正な取引に注意しましょう。以下の場合は利益相反取引に該当する行為とみなされます。
(a) 理事長が自己または第三者のために医療法人と取引をしようとする場合
(b) 医療法人が理事長の債務を保証すること、その他理事長以外の者との間において医療法人とその理事等との利益が相反する取引をしようとする場合

上記(a)を直接取引による利益相反、(b)を間接取引による利益相反と言います。
直接取引による利益相反取引の例は以下の通りです。
① 理事長と法人間で行われる売買契約
② 法人から理事長へ行われる贈与
③ 理事長からの利息が付いた法人への金銭貸付
④ 法人から理事長へ行われる債務免除
⑤ 理事長が受取人となる法人からの約束手形の振出し

間接取引による利益相反取引の例は以下の通りです。
① 理事長と第三者間の債務を法人が保証する契約
② 理事長が第三者間とする債務を引き受ける契約

相反取引を行う場合は、以下のいずれかの手続をとる必要があります。

① 社員総会で取引について承認を得る(社団法人)
② 定款・寄附行為で、理事長個人と法人の利益相反取引について、法人を代表する者を定めておく
③ 都道府県知事に特別代理人の選任を求め、特別代理人が法人を代表して契約を締結する

(2) 取引の時価取引
理事長の個人所有不動産を医療法人が購入する具体例を考えてみましょう。理事長個人が所有する土地を時価1.2億円とします。そして仮に1億円が相続税評価額であるとしましょう。

(a) 1億円で譲渡した場合
①理事長に対する課税
理事長が医療法人に対して時価の1/2以上で譲渡しているため、相続税財産評価額1億円で譲渡したものとして税金が計算されます。

②医療法人に対する課税
医療法人が受け入れた土地の時価1.2億円と、実際の受入価1億円との差額2,000万円が医療法人の受贈益となり、法人税が課税されます。

(b) 5,000万円で譲渡した場合
①理事長に対する課税
理事長が医療法人に対して時価の1/2未満で譲渡しているため、時価の1.2億円で譲渡があったものとして税金が計算されます。

②医療法人に対する課税
医療法人が時価より低い5,000万円で資産を受け入れているため、時価1.2億円との差額7,000万円は、医療法人の受贈益となり法人税が課税されます。