出資持分の払い出し

1.ポイント

医療法人設立当初の出資額に対して多くの払い戻しを受けた場合には、個人で所得が発生し、申告しなければなりません。

2.解説

(1)出資持分の払戻し請求

厚生労働省が公表しているモデル定款では、持分の定めのある医療法人に限り、出資社員が退社する場合には、その出資額に応じて、出資持分の返還を請求できることになっています。出資持分を払い戻す場合は「時価」が基準です。このときの「時価」は、「売買実例価額」や「相続税評価額」などをもとに計算します。但し、定款において、払戻価額は出資額を限度とする等、具体的な定めがある場合は、定款の定めが優先されます。

 

(2)出資持分の払戻請求にともなう配当所得課税

退社した場合、その払戻金額は、設立当初に出資した金額がそのまま戻ってくるわけではなく、退社時点で医療法人全体の出資持分を時価評価した上で払い戻されます。

そして、その差額が配当所得となり、これは所得税における総合課税の対象となりますので、給与所得等の他の所得と合算して、所得税・住民税が課税され、最高50%の超過累進課税が適用されます。

 

(3)収支額限度法人とは

平成19年4月1日の第5次医療法改正で、持分ありの医療法人は設立できなくなりましたが、それ以前に設立された医療法人の中には、経過措置型医療法人の中で「収支額限度法人」があります。これは一般的な時価評価ではなく、あらかじめ定款で、退職時には実際に支払った出資額によって精算を行うと定めておく法人です。出資額限度法人であれば、社員が死亡した際の社員持分の相続税評価額の時価評価といった煩わしい作業からも解放されます。

 

出資額限度法人にも問題点があります。例えば、一般の医療法人の大半は、同族社員で運営されています。法人税法上、同族会社の扱いを受ける医療法人が定款を変更して出資額限度法人に移行したのち、社員が退社した場合、払い込んだ出資金の範囲内の払戻金に対して課税はなく、医療法人側にも受贈益課税は課されませんが、社員の死亡により、相続人が出資および社員としての地位を相続した場合は、他の同族社員へのみなし贈与として課税対象となりますので、注意が必要です。出資持分のある医療法人の場合、出資社員の退社によって多額の払戻しが必要になり、経営の圧迫につながることもあります。