医療法人の決算書

1.ポイント
利益が多く上がっているとたくさん現預金があると錯覚しますが、会計上の利益と残る現金とは全く異なることに注意が必要です。

2.解説
医療法人の決算書は、一般法人の決算書とほとんど変わりありませんが、医療法人独自の特徴のある科目があります。

(1)医療法人の貸借対照表
(a) 医業未収入金勘定
流動資産の部の医業未収入金は、一般法人でいうところの売上に対する売掛金に該当します。売掛金と異なる点は、相手先が社会保険診療報酬支払基金や国民健康保険団体連合会であり、回収時期が一定(原則2ヶ月後)であること、回収不能になることがほぼありえないということです。決算書に計上されている医業未収入金は、おおむね当該医療法人の事業年度終了前2ヶ月分の保険診療収入(現金収入は除く)となります。

(b) 医薬品
棚卸資産として医薬品勘定の金額が多額に計上されている場合は、医療法人内にて薬を調剤していることが推定できます。一人医療法人のように小規模な医療法人では医療法人内にて薬剤を調剤していないケースが多く、その場合、医薬品の金額は少額となります。

(c) 固定資産
診療科目及び診療の仕方によって設備投資の金額は異なります。内科、小児科より外科の方が多額の設備投資が必要です。また、医療法人が行うことができる附帯業務は限られているので、固定資産については、基本的には医療にかかる資産になります。

(2)医療法人の損益計算書
(a) 診療報酬収入
診療報酬収入は診療を行ったときに計上されます。医療法人の収入の大半は保険診療であり、医療法の改正により、影響を受けます。

また、診療報酬は点数制になっています。1点は10円です。昨今、この点数は財源不足により、医療全体で減少傾向ですが、医院が不足している産婦人科・小児科については点数を上げているように厚生労働省の医療政策により変わります。前年と比較して診療報酬収入が減少していても、国の施策による減少なのか医療法人自身の原因による減少なのか、検証することが必要です。

(b)その他の収入
医療法人は、医療とその附帯業務以外の事業は原則禁止のため、その他の収入は多額に計上されません。そのため投資に係る収入(配当金収入や株式の売却益等)はないと思われます。

(c)売上原価
医療法人内で調剤しているか、処方箋を書いて外部の薬局にて薬を調剤してもらうかによって、売上原価は大きく変わります。医療法人内で調剤している場合は薬品の仕入が計上され、売上原価の金額は大きくなります。

(d) 法人税等
医療法人の税金計算について、「社会保険診療報酬に係る概算経費の特例」、「法人税率」「特別法人の特別税率」の特典があり、消費税、事業税も社会保険診療収入については非課税となるため、一般法人より税負担が少なくなっています。

(e) 利益処分
医療法第54条の規定により、剰余金の分配とみなされる行為は禁止されています。したがって、利益処分による配当、役員賞与の支給はありません。

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