医療法人の理事の報酬

1.ポイント
医療法人があまりにぼろ儲けになっていたときに、例えば大した仕事をしていない妻に高額の役員報酬を設定してしまう事はできません。

2.解説
将来の経営のリスクに備えて、節税し、親族内でキャッシュを貯めておきたいというのは人情ですが、そのときに、職種に関わらず高額すぎて税務上否認されないかということも問題になります。

(1) 役員報酬制度のおさらい
損金算入される役員給与とは以下のものに限ります。
(a) 定期同額給与
・支給時期が1ヶ月以下の一定の期間ごとであること。
・その支給時期における支給額が事業年度を通じて原則同額であること。(業績の著しい悪化にともなう減額など、一定の例外規定もある)
・事前の定めがあること。(議事録の作成等が必要)
(b) 事前確定届出給与
・支給時期、支給額があらかじめ定められており、その内容に関する届出書を所轄税務署長に提出していること。
(c) 利益連動給与
・業務執行役員のすべてに支給すること。
・算定方法が有価証券報告書に記載される利益に関する指標を基礎とした客観的なものであること。
・支給限度額が定められていること。
・すべての業務執行役員について算定方法が同じであること。
・同族会社には認められない。(損金算入できない)・・・など
また、いずれの場合も、不相当に高額な部分は損金不算入となります。

但し、役員に対する給与のうち、使用人兼務役員に対して支給する「使用人としての職務に対する部分」については、この規定を受けることはありません。

使用人兼務役員とは、役員のうち部長、課長、その他法人の使用人としての職制上の地位を有し、かつ、常時使用人としての職務に従事する者をいいますが、次のような役員は、使用人兼務役員となりません。
(a) 代表取締役、代表執行役、代表理事及び清算人
(b) 副社長、専務、常務その他これらに準ずる職制上の地位を有する役員
(c) 合名会社、合資会社及び合同会社の業務執行社員
(d) 取締役(委員会設置会社の取締役に限ります)、会計参与及び監査役並びに監事
(e) 同族会社の役員のうち一定の要件を満たす役員(医療法人は考慮の必要なし)

(2) 医師である理事に対する報酬決定のポイント
どの程度の役員給与が適切なのかは、実務上、役員の職務内容や医療法人の収益状況、他の使用人との比較で決定されます。

(a) 常勤か、非常勤か、職務内容に対して相当か。つまり非常勤の理事に高額の支給をした場合は否認される恐れがあります。
(b) 医療法人の収益状況・他の使用人と比較して高すぎるか。法人の決算内容と比較して支給額が不自然でないか、他の使用人に比べて極端に高すぎないか等を判断します。
(c) 同種同規模の医療法人の役員給与と比較して高すぎるか。同種同規模の医療法人と比べて極端に高すぎる場合は、否認される恐れがあります。

医師以外の役員に対する報酬も、基本的には医師に対する報酬決定のポイントの条件と同じです。ただし、医師である理事よりも医師以外の理事の報酬が高いというケースはほとんどないと思われます。

いずれにしましても、一度決めた役員報酬の金額を「かなりの利益がでそうだから」といった理由で安易に上げることは、損金算入される役員給与の条件を満たさないため、結果として節税どころか法人税がさらに課税される可能性が高いのです。そのため、事前にしっかりとした事業計画を立て、これに基づいて慎重に役員報酬の金額を決めることがより重要になってきます。