医療法人の消費税

1.ポイント

法人成りした医療法人で初年度に1,000万円以上の基金を拠出した場合でも、また前年度の医者の個人事業の課税売上が1,000万円以上であっても、初年度は消費税免税事業者になります。

2.解説

(1)免税事業者か課税事業者か

基金を有する持分の定めのない社団医療法人の場合、基金の額は消費税法の定める「資本金の額又は出資の金額」には該当しません。また、新たに設立された法人については基準期間が存在しないため、設立1期目及び2期目は原則として免税事業者となります。

 

これまでの出資持分ありの経過措置型医療法人と異なり、法人の事業年度開始の日における基金の額は「消費税法第12条の2(基準期間がない法人の納税義務の免除の特例)に掲げる『資本金の額又は出資の金額』に該当しない」とされています。従いまして、基金の額が1,000万円未満であることが消費税免税事業者の必須条件ではなくなりました。また、個人事業者がいわゆる法人成りにより新規に法人を設立した場合には、個人当時の課税売上高はその法人の基準期間の課税売上高に含まれません。

 

(2)簡易課税制度

なお、課税期間の前々年又は前々事業年度の課税売上高が5,000万円以下で、簡易課税制度の適用を受ける旨の届出書(消費税簡易課税制度選択届出書)を事業年度開始の前日までに提出している法人は、実際の課税仕入れ等の税額を計算することなく、課税売上高から仕入控除税額の計算を行うことができる「簡易課税制度」の適用を受けることができます。この制度は、仕入控除税額を課税売上高に対する税額の一定割合とするものです。この一定割合を「みなし仕入率」といい、事業の種類によってみなし仕入率が異なります。

 

【みなし仕入率】

第一種事業(卸売業)

90 %

第二種事業(小売業)

80 %

第三種事業(製造業等)

70 %

第四種事業(その他の事業)

60 %

第五種事業(サービス業等)

50 %

※医療法人の場合は、概ね50 %となります。ただし、物品の販売等については80 %、不要な機器の売却は60 %と異なるみなし仕入率を適用することになります。

 

医療法人の場合、消費税の課税対象とならない社会保険診療などがあること、経費のうちに人件費など消費税の対象とならない金額の占める割合が大きいことなどから、簡易課税制度を選択する法人が多くなっています。

 

  • 医療法人において消費税のかかる取引とかからない取引

医療法人の場合、健康診断、自由診療などの消費税対象となる取引と、社会保険医療や労災など消費税の対象外の取引があります。

 

消費税の対象とならないもの

健康保険法・国民健康保険法・老人保健法などに基づいて行われる社会保険医療給付金、身体障害者福祉法・生活保護法などに基づいて行われる公費負担医療給付金、労働者災害補償保険法など基づいて行われる医療給付金、助産にかかる医療などの診療収入

消費税の対象となるもの

予防接種委託料、診断書作成料、健康診断、人間ドックなどの自由診療収入。また医業収入以外の収入についても、自動販売機の売上手数料、公衆電話の回収料金等の売上。その他、医療法人で使用していた固定資産を売却した場合の固定資産売却額なども、消費税の対象。

 

  • 課税事業者になった方が有利になる場合

設備投資が多額にあった場合などは、免税事業者であっても課税事業者を選択することによって、課税仕入れが大きく成れば、消費税の還付を受けることができます。

新たに事業を開始した法人が課税事業者になるには、その事業を開始した日の属する課税期間の末日までに提出すれば、その課税期間から課税事業者となります。この届出書を提出した事業者は、事業廃止の場合を除き、原則として、課税選択によって納税義務者となった最初の課税期間を含めた2年間は免税事業者に戻ることはできません。免税事業者である設立初年度から課税事業者になるかどうか、については慎重に考えましょう。

 

  • 免税事業者である期間でも課税事業者になる場合

基準期間の課税売上高が1,000万円以下(または基準期間がない場合)であっても、特定期間の課税売上高が1,000万円を超えた場合、当課税期間から課税事業者となります。ここで、特定期間とは、法人の場合、原則としてその事業年度の前事業年度開始の日以後6ヶ月の期間をいいます。

なお、課税売上高に代えて、給与等支払額の合計額により判定することもできます。たとえ設立2年目の原則免税事業者の期間であっても、特定期間の課税売上高が1,000万円を超えそうな場合は、一般課税または簡易課税のどちらが有利かをシミュレーションしてあらかじめ届出を出しておくということも必要になってくるでしょう。