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お客の先を見ず、目の前のお客だけを見よう

顧客がわかっているときに本当の顧客が欲しいものを知らないというのはよくある話ですが、そもそも顧客が誰かを間違っているために提供価値がずれてしまうということもよくあります。

医療機関では頭や体の様子を調べるために、MRI検査を行うことがありますが、患者はトンネル型の装置に入り、身動きをすることなく、閉鎖感に堪えなければなりません。そこであるメーカーがオープン型のMRIを開発したのです。そうなると閉鎖感に堪える必要はなくなります。そこでメーカーは閉鎖感からの解放という新しい価値を提供できると考えたのです。しかし売り出して見ると思ったよりも売れなかったのです。それは顧客を見誤っており、そもそもMRIの顧客は患者ではなく病院なのです。病院が重要だと考える価値は、閉鎖感なんてどうでもよくて、MRIは一台何億円もする高額の機械のため、1日に何人の患者を検査できるかの方が重要でした。その一日当たりの処理人数が二倍になれば患者一人当たり検査単価が半分になります。従って、画像撮影に要する時間が短縮される方がいいのです。患者はトンネルの中に入ることで多少の閉塞感を感じることはありますが、検査を行う上で深刻な問題となるほどではありません。より重要なことは、いかに効率よく大勢の患者をさばけるかということだったのです。

このような違いは、メーカーの技術者が起こしてしまう傾向があります。依然のカメラメーカーの技術者からすれば、デジカメ等おもちゃ程度の認識しかなかったというのです。ところが今はどうでしょう。既にスマホカメラで十分になってしまっています。一般人にとっては本当に十分すぎる機能です。顧客が求めている価値は、手軽に撮ってメモ代わりにするニーズです。メモ代わりですから読める程度の解像度であれば十分です。あるいは手軽に撮って誰かに送って見せたい、PCに取り込みたいというニーズもあります。その場合には通信機能の付いたカメラの方が良いのです。

このように写真を撮ることで提供している価値は数多くあって、一般消費者が求める価値の大部分は、カメラ付携帯電話で十分に足りてしまいます。実際は、カメラメーカーの技術者もカメラに対する機能の数多くを熟知していたに違いありませんが、カメラの技術者としては自分たちの製品が否定されることを信じたくなかったということもあったのでしょう。それに高性能の製品を開発していたという自負もあったと思います。

後から出てきた品質の劣る技術に対して、選考する高い技術を持っているプレーヤーは脅威ではないと思って対応しなかった結果、後からひっくり返されるということが往々にして起こってしまうのです。

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