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昔の強みはいつかは強みでなくなる

顧客に提供する価値を読み違えておらず、正しい価値を提供してきても、時代の変遷とともに、顧客の求める価値が変化し、いつの間にか劣勢に立たされていたというケースもあります。

半導体露光装置というものがあり、これは20世紀末までニコンとキヤノンの市場シェアが合計で8割近くまで達していました。それがオランダのASMLに追い抜かれ、2010年の時点で世界シェアが80%に達しました。

露光という工程は、半導体の品質において重要であり、緻密に引いた回路を正確に写すには、非常に難しい技術が必要とされます。少しでもレンズが歪むと隣の線とくっついてしまい、不良品となってしまうからです。

しかしその後、技術進歩によって不良品率がどんどん下がり、歩留まりでは差がつかなくなりました。これ以外のところで差別化を図っていかなければならなくなっていたのです。それは、一分間に何個作れるかという「生産性」や取り扱いが容易である「操作性」になってしまいました。従って、顧客への提供価値も歩留まりから生産性や操作性へシフトすべきだったのです。

また、半導体を作るプロセスはかなり標準化して、技術上の特殊なすり合わせも昔ほど重要ではなくなりました。微妙なすり合わせが必要な場合は、全ての部品を内製していた方が有利であるが、すり合わせが不要で多くの工程が標準化されていれば、必ずしもすべてを自分で内製する必要はないのです。オランダのASML社は徹底的にプロセスを標準化して、主要部品である投影レンズやステージですら外部調達する方向へシフトしていきました。

このような顧客の求める価値の変化に対応し、生産性、操作性という新しい価値を提供したASML社がシェアを伸ばし、ニコンやキヤノンは古い価値提供にこだわり続けました。これらの対応が遅れた理由の一つは、既存顧客に目が行ってしまい、新しい顧客のニーズを見逃したことにあります。半導体メーカーの中でも、日本の半導体メーカーしか見ていなかったからです。日本の半導体メーカーは古い価値観に拘っていました。そのために、世の中の変化に気づかず、ASMLに先を越されてしまったのです。

後から追ってきた韓国勢も生産性や操作性を重視してきています。

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